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政治に疎い絵描きが靖国問題を考える

ちかごろテレビや新聞のニュースで気になる事。
「首相の靖国神社参拝をめぐって冷え込んでいる日中関係(又は日韓関係)」というのが、まるで枕詞のように繰り返し出て来ること。
事実を言っている、といえばそれまでですが、これほど繰り返されると、まるで首相が靖国神社に参拝するのが「悪いから」日中あるいは日韓関係が冷え込んでいる、という短絡的なイメージを広める結果になるのではないでしょうか。

首相の靖国神社参拝が悪いことなのか、それでは考えてみたいと思います。

中国と韓国からの批判は、戦争において両国に「被害を与えた」ことの責任者である「A級戦犯」が祀られている靖国神社に首相が参拝するのがけしからんとのこと。ほとんどその一点ですね。

では、このA級戦犯というのは何でしょうか?

日本が60年以上前に戦争を行った後、日本の戦争に関わった日本人が、戦勝国によって裁かれるという「東京裁判」が行われました。そこで、特に当時指導的な地位にあった人々に「平和に対する罪」および「人道に対する罪」があるとされたのが、いわゆるA級戦犯です。

しかし、「平和に対する罪」も「人道に対する罪」も、その戦争の当時、国際法には一切規定されていなかったものです。有りもしなかった罪状を後付けして人が裁かれること自体間違いであり、「東京裁判」そのものに意味が無い、との見方があります。実際に、東京裁判の現場においてもそのことを主張し、全員無罪との判決書を提出した判事(ラダビノート・パール)がいます。東京裁判において国際法の専門家は彼だけだったと言われています。
また、東京裁判が有効と考えたとしても、後に日本が主権を回復した際、他の当事国の合意と、国会決議に基づいて「A級戦犯」は赦免を受けています。つまりすでに法的に名誉を回復しており、「A級戦犯」というものはもはや存在しないと言えるのです。

一方、法律の話を抜きにして、もし本当に人道的に悪いことをして、平和を乱したのなら、やはり彼らを祀る所に首相が参拝するのはよくないかもしれないですが、その点はどうでしょう。
当時、世界中が平和を望んでいるところへ日本が一方的に戦争を仕掛けたのでしょうか?それは違います。当時戦争をしたということが「平和に対する罪」だったとしたら、他の多数の国の指導者も同罪になるでしょう。
人道的にひどいことを日本軍が行ったとされる事については、不確かな根拠に基づいて、あたかも事実のようにされてしまってきたということが非常に多いようです。それが近年徐々に明らかになってきています(いわゆる「南京大虐殺」「従軍慰安婦」等)。
本当に非人道的な行為があったのなら、それについて謝罪はするべきでしょうが、糾弾されているからきっと事実なんだろう、などとあやふやな理由で謝罪したのでは、自白の強要による「えん罪事件」のようになってしまいます。

「A級戦犯が祀られている所に参拝することは、ヒトラーの墓参りをするようなものだ」などと言う人もいますが、それは違います。ヒトラーは、ユダヤ人に対する大量虐殺を指示した独裁者だから、その者に政権を与えた責任でドイツは謝罪してきたのですが、それと比較され得るような人は「A級戦犯」にはいません。

「東京裁判」から離れて、自国の国民を苦難に陥れた指導者という意味で責任を問うべきとの意見もありますが、その苦難は、当時の国際情勢からもたさられたものでもあります。
個人的な殺人事件などの話なら、「私ならあんなひどいことは出来ない」と普通に言えます。しかし、当時の状況における彼らの立場を踏まえた上で「私ならきっと戦争を避けられた、こんなに死なせなかった」などと簡単に言えるでしょうか?

靖国神社は「A級戦犯」とされた人も含めて、東京裁判により処刑された千人以上の人々を「昭和の殉難者」として祀っています。それは決して特別な地位に祀っているわけでなくて、彼らも当時の戦争の一貫で犠牲になった人々であった、との認識に立って、数百万の戦没者の中に加えているのです。このことを支持しない人もいるようですが、ここまで書いたような事情をよく知った上でなら、靖国神社がとっている立場を理解できるのでは、と思います。
いずれにせよ、数百万の戦没者の追悼をするなら、その慰霊の場所は靖国神社であるという、過去と現在の人々の認識を無理に変更させることは不可能でしょう。

以上のようなことがあるにも関わらず、首相のコメントも政府の見解も「A級戦犯」の問題を避けているため、中国と韓国の批判に対して、何か後ろめたいような印象を残す結果になっているのが問題です。
「東京裁判」については、当時その判決を受諾したのだから、いまさらこれに異議を唱えはしない、との立場もわかりますが、すくなくとも国内的には彼らは犯罪者とはされていません。これは安倍官房長官がその旨述べていたと思いますが、首相の立場でも、この事はもっと明確にしたらどうかと私は思います。

ここで、ごく短く、東条英機首相についてのエピソードに触れておきます。
「A級戦犯」の親玉のように言われることが多い人ですが・・・

ナチスドイツに迫害され、満州に逃れてきたユダヤ人がいたが、これを救済することを東条英機が了承した。これにより実際に救われたユダヤ人は2万人以上。
東条英機はインドの「独立の闘士」チャンドラ・ボースに協力した。インドでは日本にも東条英機にもきわめて好意的。

当時の戦争のことは、立場によっていろいろな見解があります。視野を広げてみれば、その複雑な様相に圧倒されます。「歴史認識」と簡単に言うけれど、それを完全に一つにまとめることは極めて困難でしょう。

歴史をふまえた追悼の儀礼としての「参拝」は、つきつめれば小泉首相の言う通り「心の問題」に帰するしかないことだと思います。

もしこの問題が、他国の干渉によって左右されるということになれば、将来は首相の行動だけでなくて、我々国民の心の問題までも、外からの力で動かし得ることになってしまうのではないかと、私は心配しています。
絵描きの私がこんなことを議論しても何の得にもなりませんが、その心配があって、書かずにいられませんでした。

4月 25, 2006 at 10:57 午後 ニュース, 経済・政治・国際 |

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